【noteからの転記】今パリにいる私が思うこと。

はじめに。

この記事は2020年3月にnoteのマイページで投稿した記事です。
いろいろあってnoteのアカウントを閉じたのですが、この記事は自分自身でも忘れたくない出来事だったので、こちらにも残しておくことにしました。

 以下、転記。

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色々な楽しい記事から始めようと思っていました。
旅の準備、実はめんどくさいよね〜とか、これまで行って来た場所についてだったりとか。だけど世界中で猛威を振るっているこの話題に背を向けて、他の記事を挙げることは出来ませんでした。
勿論専門家ではないし、長くパリに住んでいるわけでもない。今、このタイミングでたまたまパリにいるだけの人です。でも観光客の人よりはこの街に馴染みがあって、長くこちらに住んでいる人よりは“日本人ぽい”感覚が色濃い。そう言う、私なりの視点で思うことを書いてみようと思います。

①街中でマスクなんか見たことない2月からマスクが売り切れる3月へ

パリに着いたのは2月14日。日本ではすでにコロナウィルスの影響が出始め、街中ではマスクや消毒用アルコールなどの製品が店頭から姿を消していました。長時間フライトでは乾燥した空気などから喉を痛めて、そのまま風邪を引く確率が高いので、ここ数年は必ずマスクを着用していました。それは今回も変わらず。出国からCDG空港に着くまでは食事の時間以外は一切外しませんでした。CDG空港に着くまでは。空港の敷地から出るとともに、使い捨てマスクとはサヨナラ。フランス含め、ヨーロッパ諸国では日本人のように予防でマスクをすると言う習慣がないため、マスク姿のアジア人というのは変に目立っていらぬ疑いを持たれるのではと懸念したからです。
パリに到着した翌日に市内の大きなドラッグストアに行きましたが、消毒用アルコール、アルコール入りウェットティッシュ、マスクはいずれも在庫がありました。私自身は消毒用アルコールを一つ購入。

この時点ではフランスではまだ感染者もほとんどおらず、パリ市内もいつも通りの様相でした。街中を歩いていても特に気になることもなく、本当にいつも通りのパリ。日本ではテレビをつければコロナウィルスかアルコールとマスクがないという話しか聞こえてこないような暗い雰囲気だったので、まったくコロナの脅威を感じないパリでの日々は逆に開放的でとても穏やかな気持ちで日々を過ごしていました。

そして月が変わって3月。イタリア北部での感染者数の増加に伴い、フランスでも俄かにコロナの影響が出始めました。地方都市から徐々に感染者が増え始め、あっという間に100人、200人を超えて3月8日現在では423名の感染者が出ています。本日時点でなんと日本の感染者数を抜いてしまいました。先週土曜日の時点で、市場にある医療用マスクは政府の保有となり、医療従事者や必要となる人に優先的に配布されることになりました。
そのため、今週ではもう薬局などでマスクを見かけることはなくなってしまいました。さらに消毒用アルコールも一時通常の2倍以上の価格で販売されていましたが、すぐに政府の是正措置が入り、50ml以下の消毒用アルコールは2ユーロ以下でしか販売してはいけないことになりました。
こういう対応の早さは良いですよね。ちなみに2倍以上の価格で売っているのを見かけたのは街中の普通の薬局でした。どうなのそれ。

②買い溜め始まる?店頭から消えたパスタ

今日スーパーに買い出しに行ったら、とある棚だけすっからかんだったんです。とうとうティッシュ?トイレットペーパー!?と思ったら違いました。
まさかのパスタ。なんでパスタ???そういえばイタリアではパスタの買い溜めがニュースになってましたよね。まさかフランスでまでパスタが棚から消えるとは…マンマ・ミーア…

私がパスタの棚が空っぽでぽかーんとしている横で、お年を召したムッシューがパスタをお探しに来られたのだけど、同じく空っぽの棚にぽかーんとしてらっしゃって、二人で「パスタ、ないねぇ」って言って別れました。

イタリアに続き、フランスもパスタないです。週明けには補填されているといいのですが。あとはこの流れで紙類の買い溜めが始まらないことを祈るばかりです。

③人の視線となんとなくの嫌悪感を感じる3月1週目

楽しい2月が去り、コロナの暗い影がフランスにも伸びてきた先週1週間。
まず結論からいうと、ちょっと居心地悪くなってきたな。という感じです。
日常生活は何ら問題ありません。日本でもニュースになっているようですが、外国にいるアジア人に対する暴力行為や差別発言なんてのも、今のところ私や私の周囲にいる人からは聞こえてきません。
スーパーで買い物をしたり、美術館に行ったり、クライアントに会うときも、みんな笑顔で「Bonjour!」と言ってくれます。握手とビズ(挨拶のキス)は感染予防のためNGが出ていますが、それ以外は特に変わりなく接してくれる人がほとんどです。

ただ、まさに今日。メトロに乗っていて2回ほど(それぞれ別の人です)明らかに私の顔を見てマフラーに顔を埋めたり、鼻を摘まむような仕草をして顔を下に向けたりする人に遭遇しました。直接何かを言われたわけではないし、その人たちが悪気があってその仕草をしているわけではないとわかっています。(悪気があったらもっと明らかな悪意を感じます)
私は咳もくしゃみもしていないし、一人で乗車しているので喋ってもいないです。つまりその行為はまったく無意味なんですが、彼らにとってそれは自衛だったのだと思います。その仕草をされて最初は「何?ウィルスなんて持ってないんだけど」と思って腹が立ったし、悲しくて寂しい気持ちになりました。
だけど思い返してみればコロナウィルスが中国で発生して問題が大きくなりだした頃、街中で見かける中国人に対して「何で今来るかな」「自重してよ」「早く自分の国に帰って欲しい」と何の気なしに思っていました。

私が見かけた中国人の中には、ずっと日本に住んでいる人もいたかもしれない。ウィルス発生前に日本に到着していた人もいたかもしれない。でもそんな人たちの背景を考えたことが一度でもあったでしょうか?

残念ながら一度もありませんでした。深く考えることもなく、「中国人だ、嫌だな」とひとまとめにして敬遠していたのです。当時の彼らへの私の思いは、今日私がされたことと何も変わりません。日本では時期を問わずマスク姿で街中を歩いていることが日常風景になっているので、中国人を見かけても明らかに顔を伏せたり…なんてことはしませんでしたが、態度には出していなくとも、考え方は同じですよね。

そして今、自分がヨーロッパに来てアジア人という括りで少し避けられたりし始めて、初めて当時の自分の考えが「人種差別的」だったことに思い至りました。情けなく、恥ずかしい思いでいっぱいです。

今、世界中でアジア人に対する暴力的な事件や差別的な発言が飛び交っていると聞きます。そして連日流れる報道に、心配して連絡をくれる友人もたくさんいます。素直にとっても嬉しいです。おかげさまで私は今も健康で症状もないし、明日以降も帰国まで元気に過ごすつもりです。

そんな心優しい友人たちと、世界中にいる日本人・アジア人への人種差別に心を痛めている人たちにも気付いてもらいたい。
日本人が世界で差別を受けることには敏感なのに、外国人が日本で差別を受けることに鈍感にならないで欲しい。私たちが何気なくしている(してしまっている)仕草に、相手は必ず気が付いていて、傷付いています。
これだけ「手洗い・うがい」での予防を提唱されているんです。感染が恐ろしいのなら、しっかり予防してください。手を洗って、うがいをしてください。外国人を不要に避けることには何の意味もありません。
だってもうこの問題は「どこの国・人が発生源か」が問題ではないから。 

 

最後は少し長く、重くなってしまいましたが、今日何よりも感じたことだったので書いてみました。読んでくれた方に、何かを伝えられる・考える記事になっていたら幸いです。